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おじゃま道草1

2012.02.04

category : 怖い話

おじゃま道草を最初から読む


7年前の6月、夜10時ごろ、自宅の電話がなりました。いつになく、どきっとする音だったのを覚えています。

ミュージシャンの馬場君からでした。

「どうもオカシイ、口では説明できない。夜分申し訳ないが、来てみてほしい」

とのこと。

馬場君はバンドの合宿所として、川越に近い、ある一軒家に引っ越したばかりでした。いつにない彼の深妙な声に、いやーな緊迫感を感じましたが、長い付き合いの彼の頼みなので、行ってみることにしました。

そして、出かけようと玄関にでた瞬間、目の前のドアを誰かがいきなりノック。

開けてみると、友人の茅野君が一升瓶をかかえて立っていました。

馬場君に呼ばれて出かける旨を話すと、

「馬場君とは面識も有るし、単独で行くべきではないと思うので同行する」

と言い出しました。



とりあえず車を出し、その車中で話し合いました。その日はたまたま暇で、急に私の顔を見たくなったのだそうです。

茅野君はもともと感の鋭い人で、私の顔を見た瞬間、

「何かあったな」

とピンときたといいます。

馬場君はいくつかの因縁を抱えた人で、以前から問題を起こしやすいタイプの人でした。

茅野君は、私を通して、馬場君の波乱万丈ぶりを知っていましたが、今回は今までとは違うように感じる、という点で、意見が私と一致しました。



車で30分ほど走ったとき、茅野君が突然、

「うわぁーーっ」

と声をあげました。

話を聞くと、

「一瞬道路の前方に、身長50mはあろうかという真っ赤な仁王さんが、「来るな!」のポーズで立ちはだかった」

というのです。

彼はその当時、仏像の知識をほとんど持ち合せておらず、「仁王」と表現しましたが、後日写真集を見せて確認したところ、明王部の中でも不動明王の立像に一番似ていたそうです。



初めての訪問だったので、馬場君に最寄りの駅前まで迎えに出てもらいました。

馬場君を駅で拾い、車中で「何事か」と問うと

「格安で二階家、いい物件だと思ったが、どうもオカシイ、とにかく来て、見てから、意見を聞かしてくれ。」

といいます。
 
到着すると、そこは目の前を高速道路が走り、雑木林に三方を囲まれた10戸ほどの分譲住宅の中にある一軒でした。囲まれていない開いた方の、道路に面した角にたっており、築10年位でした。

車を降りると、まず、私はその家に向けてカメラのシャッターをきりました。

梅雨の中休みといった気候で、蒸し暑い夜でした。



「はまったな、、、」

その場に立った時の素直な感想でした。



その家の外見で気になった点を挙げてみましょう。

・全ての敷地内の雑草が外側へ向かって伸びている。

・敷地内の南西の角に3本の木(高さは2階の軒とほぼ同じ)がある。

・3本の内、南よりの1本は立ち枯れになっている。

・分譲住宅なので、周囲の家屋と同時期の築のはずだが、それだけが傷みが大きい。



隣の住人が網戸ごしにこちらを覗いているのを気にかけながら、中へ。

「むさ苦しいところだが、まあはいってくれ。」

馬場君のさそいに、玄関へ一歩。

「く、くさい、何だ?、、、」というのが内部を見た第一印象でした。

茅野君は開口一番、

「猫、飼ってるのかな?」

私もそれに相槌をうつと、馬場君は、

「うちには居ないが、周りには何匹かいるよ。匂う?

やっぱりなあ。いくら掃除しても、抜けないんだよね。」

玄関から上がってすぐ左が階段。玄関(西)から正面(東)へ真っ直ぐに廊下があり、突き当たり右(南東)がダイニングキッチンで、左(北東)が浴室。

私たちは、上がって右手(南西)のバンドの練習室に通されました。

「す、涼しい、、いや、寒い、、エアコンは?、、な、ない!、。

窓は?、、閉じてる。」

窓の外に妙に目立つものが、、、。よく見ると枯れ木でした。



「この部屋が1階では一番まともなんだ。」

マネージャーの女の子が茶を入れている時、やっと馬場君が話を始めました。

馬場君の話の概要は、

・1階で寝るとうなされることがある。

・2階に全員が居る時、1階から話し声が聞こえる。

・1階から上がってくる足音がしたのに誰も来ない。

・引っ越してきた時、押入の中にケース入りのゴルフクラブ一式が残されていた。

・台所に行くのをみな嫌がる。

といった現象なのですが、猫について次の様な体験を話してくれました。



「昨日、2階に居たら1階で物音がしたんで、「買物に行ってたヤツが戻ってきたかな?」と思って下へ降りてきたんだ。

そしたら、玄関のドアは開いてたんだけど、誰も居ない、、。よく見ると、近所の猫が入り込んでたんだな。

ところがそいつがなかなかつかまらない。ちょっと掴むと、必死で引っ掻いて抵抗する。この引っ掻き傷、見てみなよ。

そこで、窓を開けてやったんだな。ところが追い回したけど、猫は窓を無視するんだね。そして、そのうち、猫が玄関へ走ったんだ。「やった、出てくぞ、、、」そう思ったら、猫が変な行動をとったんだ。

玄関に降りるやいなや、ビタッと立ち止まって急に向きをかえたんだね。そして俺の足下をぬけて階段上がって、2階の窓から屋根越しに逃げたんだ。

で、さぁ、、、。

その、玄関での行動なんだけど、本当に変なんだよね。何か、目の前に恐ろしいものでもいて、あわてて引き返した、、、という感じなんだ。俺に追いかけられるよりは、よほど怖そうだったよ。」



この話を聞いた茅野君は、

「その猫、何かに操られてたんじゃないかなぁ。」

と、コメント。

私は、その話の間も、廊下を猫が行ったり来たりしている様な感じがしていました。

「その猫はたまたまそうなっただけで、普段は生きていない猫がうろうろしているみたいだね。」

私がそういうと、すかさず茅野君は、

「うん、今も廊下をふっと影が通った様な気がしたよ。」

と、意見が一致。

しかし、大切なのは、さっきの茅野君のコメントです。私は、茅野君の勘(感)を生かすつもりで、彼にたずねました。

「でも、本体は猫じゃないな。台所へ行ってみる?」

「いいや、今はよすよ。明後日は休みだから、明るいうちに来よう。」



この後、馬場君からもう少し話を聞き、新曲のデモを聞かせてもらい、台所には足を踏み入れず、午前2時ごろ帰途につきました。

茅野君を送った後、私は自宅へ戻りました。

「ん? 誰も居ないはずの弟の部屋でひとの気配がする、、、、。

電気をつけて、覗くと、、、やはりいない、、、、。

来たな、、、。」

私は、

「くるな!」

と強く念じ、気配が消えたのを確認してから床に入りました。





おじゃま道草2へつづく




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